GNSS/PNT用語集
衛星測位、屋内測位、時刻同期、信号認証、PKI — 当社が扱う領域の専門用語を、簡潔に解説します。
技術検討・社内勉強会・取材時の参考にご活用ください。
CATEGORY 01: 基礎概念
GNSS / 全地球航法衛星システム
Global Navigation Satellite System の略。GPS(米)、GLONASS(露)、Galileo(欧)、BeiDou(中)、QZSS(日)など、複数の衛星測位システムの総称。複数システムを併用することで、測位の精度・可用性が向上します。
GPS / 全地球測位システム
米国が運用するGNSSの代表的システム。Global Positioning System の略で、現在は世界中で広く利用されています。GPSはGNSSの一種であり、両者を厳密に区別せずに使う場面もあります。
QZSS / みちびき / 準天頂衛星システム
Quasi-Zenith Satellite System。日本の準天頂衛星「みちびき」によるGNSS。日本上空に長時間とどまる軌道を取り、高精度測位サービス(CLAS、MADOCA-PPPなど)や信号認証サービス(QZNMA)を提供。
みちびき運用機数/7機体制(QZSS Constellation)
2024年末まで4機体制(準天頂3+静止1)。6号機(静止軌道)が2025年2月打上げ・7月サービス開始で5機体制に。5号機(準天頂)は2025年12月、7号機(準静止)は2026年2月打上げ予定で、7機体制の本格サービスは2026年度から。7機体制が整えばみちびきだけで常時4機以上を捕捉でき、他国GNSSに依存しない持続測位が可能。将来は11機体制も計画。※公開時点の最新運用機数に合わせて更新のこと。
PNT
Position(位置)、Navigation(航法)、Timing(時刻)の頭文字。GNSSが提供する3つの基本機能を指します。社会インフラとして欠かせない要素であり、その信頼性と精度の向上が、現代の様々な産業を支えています。
レガシ信号/近代化信号
GPS・GLONASSは初期にレガシ信号中心で設計され段階的に近代化信号を追加。Galileo・BeiDou・みちびき・NavICは当初から近代化信号を前提に設計された。
「1つの信号に依存する時代」から「複数の高品質信号を前提とする時代」へ。
各システムの相互運用周波数帯はL1とL5に収束しており、近代化信号は測位能力が質的に向上している。
L1 C/A の限界
従来の高精度受信機はL1/L2のデュアル周波数受信が主流で、電離層遅延を2周波観測で除去していた(「L1/L2=高級機」の時代)。L1 C/AはレガシGPSの基本コード。
C/Aコードは設計が古くマルチパスに弱い。信号の輻輳が起きやすく、将来サービス(認証・高精度補正)との親和性が低い。衛星数増加・都市部での利用拡大・高精度高信頼化の要求で「時代が変わった」。
BOC変調
近代化信号で使われる新しいコード設計。BOC系変調(例:BOC(1,1)、MBOC など)。
耐干渉性・測距精度・マルチパス耐性・都市/遮蔽環境での可用性を向上させ、高精度補正/認証サービスとの親和性が高い。L1C信号はBOC(1,1)変調のため他信号への干渉は限定的。
GPS衛星ブロック(IIA/IIR/IIR-M/IIF/III・IIIF)
GPS衛星の世代区分。レガシ(IIA・IIR:L1 C/A、L2P(Y))→近代化(IIR-M:L2C・Mコード/IIF:L5/III・IIIF:L1C)。設計寿命や送信信号が世代ごとに異なる。
受信できる近代化信号は軌道上の衛星構成に依存する。GPS III/IIIFは信号の信頼性・精度・完全性が向上。受信機選定や対応信号を考えるうえでの背景知識。
SLAS/L1-SAIF(みちびき)
みちびきがL1帯(L1S)で配信していたサブメータ級のメートル級補強サービス。SBAS互換信号として提供されていた。
SLASは終了しSBASに集約(別衛星MSAS、みちびきからはL1Sbで配信)。L1帯の信号干渉レベル制約から5〜7号機ではL1S信号配信を停止し、3・5・7号機でL1SbからSBAS配信サービスに移行した。
L1C/B(みちびき)
みちびき6号機以降で送信に切り替えられる信号。L1 C/AのPRNコードが輻輳している為の代替信号。
L6信号(L6D/L6E)(みちびき)
高精度測位と信号認証を担う独自の拡張信号(中心周波数1278.75MHz)。L6D=測位系チャンネル(高精度測位の補正情報を配信、PPP-RTK型のCLASサービス)。L6E=認証系チャンネル(測位信号・配信データの真正性を確認する認証情報)。
L6信号は高精度測位(L6D)と信号認証(L6E)を同一の時刻基準で提供できる点が特徴。なりすましや改ざんへの耐性を高める。L6Eは地上通信に依存しない災害・インフラ用途向け防災メッセージにも対応。
測地系(WGS84/日本測地系 JGD2000・JGD2011)
GNSS受信機が出力する座標は、地球を楕円体で近似した世界測地系(WGS84)に基づく三次元座標。一方、日本の地図や基準点は国土地理院が定義する日本測地系(JGD2000/JGD2011、適用地域=日本)を用いる。
WGS84 ≠ 日本測地系。座標は固定ではなく、測地系が違えば同じ場所でも座標値が違う。日本は地殻変動が大きいため、基準点座標は地震などで更新される。高精度測位をビジネスに使うなら測地系の理解が前提。
ジオイド/地球楕円体
ジオイドは平均海面を滑らかにモデル化した面。地球楕円体はそのジオイドに近似させた数学的な楕円体。実際の地球は凸凹した不完全な球形
「実際の地球 → ジオイド → 楕円体」と近似が進む関係を押さえると、楕円体高・標高・ジオイド高の違いが理解できる。高さ基準を語る前提知識。
楕円体高/標高/ジオイド高(h = H + N)
GNSSが計算する高さは「楕円体高(h)」。地図・測量で使う標高(H)はジオイド(平均海面)基準。関係は h = H + N(Nはジオイド高=楕円体とジオイドの差)。
GNSSは「海抜」を直接出していない。X,Y,ZのZは楕円体高。NMEAのGGAは標高Hとジオイド高Nの両方を出力(例:…,545.4,M,46.9,M → 545.4=標高H、46.9=ジオイド高N)。変換に使うジオイドモデル精度は受信機依存で、高精度用途では外部ジオイドモデルの使用が望ましい。
元期/今期
地殻変動を考慮し、元期=基準となる座標時点、今期=現在の観測時点、
を区別する考え方。日本の基準点座標はこの2つを区別して管理される。
同じ場所でも測位方式で座標がズレる根本原因。RTKの結果はBASEに設定した座標次第。VRSは国土地理院の基準座標(元期)。PPP/PPP-RTKは世界基準(ITRF系)に近い座標を出すため日本測地系との間にオフセットが生じる場合がある。
CATEGORY 02: 測位技術
単独測位 / コード測位
1台の受信機だけで位置を求める最も基本的な測位方式。衛星からの信号到達時間(疑似距離)を用います。精度は10m前後で、カーナビやスマートフォンなど一般用途で広く使われています。
A-GNSS(A-GPS)
Assisted GNSS。航法メッセージ(エフェメリス等)を通信回線から取得して測位開始を高速化する方式。スマホ向けGNSSの基本技術。
スマホ向けでは単独測位より「速く・それらしく位置を出す」ことが重視され、
A-GNSS/Wi-Fi測位/セルラー測位/センサフュージョンとの融合が進んだ。ここではcm級精度は主目的ではない点に注意。
高感度GNSS
屋内に漏れ込んだ弱い信号(実効受信レベル −160〜−170dBm級)でも測位する方式。航法メッセージは通信回線から取得(A-GPS)し、受信機側はコード相関のみで処理する。
「高感度=高精度」ではない。屋内の弱信号で測位するため精度の劣化・ばらつきが大きい。直接波でなく反射波(マルチパス)主体で、点の数は増えるが精度はばらつき、特に高さ(Z)が暴れる。ゆえにフィルタや気圧で「整える層」が価値を持つ。
GNSS受信機の二極化
現在のGNSS受信機は①スマートフォン系(数量・演算力・融合重視)と②高精度GNSS受信機(精度・信頼性・補正活用重視)に明確に二極化している。
両者は競合ではなく役割が異なる進化。車載・産業用途(u-blox等)は同一チップ系列で民生〜RTKまで展開し、IMU統合を前提とした設計でcm級測位を前提とするため、システムインテグレーション(SI)に最適。
DGNSS / ディファレンシャルGNSS
既知の位置にある基準局からの補正情報を使い、単独測位の精度を向上させる方式。誤差を打ち消すことで、1m前後の精度を実現します。RTCMフォーマットで補正情報が配信される。
SBAS(WAAS/EGNOS/MSAS等)
静止衛星型衛星航法補強システム。ICAOで標準化された方式で、航空用途を含む安全性重視の測位インフラとして世界各地で運用されている。
衛星時計誤差・衛星軌道誤差・電離層遅延誤差を補正し、L1 C/A信号を用いた民生測位でサブメータ級精度と高い信頼性を提供。ほとんどの普及受信機が対応。ただし補正対象はGPS(+一部GLONASS)に限定される。
RTK / リアルタイム・キネマティック
搬送波の位相を用いた高精度測位方式。基準局と移動局の2点間で測位することで、cm級の精度をリアルタイムに実現。測量、建機制御、自動運転などで活用されている。
アンビギュイティ決定(整数N)/FIX
搬送波測位で「何波目か(整数N)」を決定すること。①コード測位で距離の概略を把握して整数候補を絞り、②時間が進んでも変わらない整数解を選ぶ。FIXは正しい整数アンビギュイティが現実の動きと矛盾しなくなった状態。
アンビギュイティは数学だけでなく「物理的にあり得る動き」で決まる。観測が連続しないと正しい整数を選び続けられない。IMUや画像で「あり得ない動き」を除外すると候補空間が最初から小さくなり、FIX状態が安定する。これが補完技術がFIXを速く・強くする理由。
PPP / 精密単独測位
Precise Point Positioning の略。基準局なしで、衛星軌道・時計の精密補正情報を用いて高精度測位を行う方式。基準局網が不要なため、広域・遠隔地でも利用できる。
PPP-RTK
PPPとRTKの長所を組み合わせた測位方式。広域での補正情報配信が可能でありながら、RTK並みの高精度(cm級)と短い収束時間を両立。
SBAS / MSAS / WAAS
Satellite-Based Augmentation System。静止衛星から補正情報を放送し、広域でDGNSS相当の精度を実現する仕組み。日本ではMSAS、北米ではWAAS、欧州ではEGNOSとして運用されています。航空機用途を起点に、一般受信機にも標準搭載されています。
MADOCA-PPP
みちびきが提供する高精度測位補強サービスの一つ。Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis - PPP の略。グローバルに利用可能なPPPサービスとして、衛星軌道・時計の補正情報。 純PPP方式の高精度測位サービス。2024年4月に本運用を開始(旧資料の「実験的サービス」という位置づけからは更新済み)。L6E信号(衛星)およびインターネット(NTRIP)で配信され、海上を含むアジア・オセアニア地域を広くカバー。収束は数十分。
CLAS / センチメータ級測位補強サービス
Centimeter Level Augmentation Service。みちびきから配信される、日本国内向けのcm級高精度測位補強サービス。みちびきL6Dで衛星配信される、PPP-RTK方式の高精度測位サービス。実運用・社会実装向けの正式測位サービスで、一般利用が対象。収束は数十秒〜数分。
MALIB
MADOCA-PPP Library。JAXAが開発した、MADOCA-PPPによる単独高精度測位のプログラムパッケージ。広く使われているRTKLIBに、MADOCA-PPPの高精度測位機能を拡張したもの。
マルチパス
衛星からの信号が建物などで反射し、直接波と反射波が混在して受信される現象。都市部や屋内付近で測位精度を悪化させる主因の一つで、対策にはアンテナ設計やフィルタリング技術が用いられる。
擬似距離誤差は数m〜数十m、測位点が壁・床を突き抜ける、時系列が突然ジャンプ、高さ(Z)が特に不安定、といった形で現れる。搬送波位相のズレは周波数ごとに異なるため、2周波受信機ではこの違いを利用してマルチパスの影響を特定できる。
電離層遅延 / 対流圏遅延
衛星信号が地球の大気を通過する際に発生する遅延。電離層遅延は周波数依存性があり、2周波受信や補正情報で除去可能。対流圏遅延はモデル化により補正します。GNSS測位誤差の主要因です。
DOP(幾何配置)/マルチGNSS前提
DOPは衛星の幾何配置の良し悪しを表す指標。利用できる衛星数が多いほどDOPが改善され、測位精度・安定性が向上する。
現代の高精度測位はGPSに加えGLONASS・Galileo・BeiDou・QZSSなどマルチGNSS利用が前提。ただし「使える衛星」と「補正できる衛星」は一致しない(補正対象はGPS+一部GLONASSに限定されるケースが多い)。
CATEGORY 03: 屋内・センサーフュージョン
屋内測位方式
GNSSが届かない屋内での測位技術群。GNSS系(IMES/地下GNSS放送)、Wi-Fi系(フィンガープリント/RTT)、BT系(BLEビーコン/AoA/Channel Sounding)、UWB、地磁気、画像(VSLAM)、超音波などBASE技術別に分類される。
方式ごとに代表精度・コスト・価値が異なる。UWBやBluetooth Channel Soundingは〜10cm級を狙える新潮流。VSLAMは相対移動に強いが絶対座標の固定・再現性は基準が飛必要。用途(エリア証明/高精度RTLS/動態管理)で選定する。
IMES / 屋内GNSS — [SHIKUMI LAB専門領域]
Indoor MEssaging System。屋内空間でGNSS互換の測位信号を放送する、日本発祥の屋内測位技術。GPS信号が届かない屋内でもスマートフォンなどのGNSS受信機で位置情報を取得できる。
IMU / 慣性計測装置
Inertial Measurement Unit。3軸の加速度センサーと3軸のジャイロセンサーを組み合わせた装置。動きや姿勢の変化を計測でき、GNSSと組み合わせることで連続的な位置追跡を実現する。
DR / 推測航法
Dead Reckoning。直前の位置と移動量から現在位置を推定する航法手法。GNSS信号が遮断される環境(トンネル、地下、屋内)でIMUと組み合わせて使われ、連続的な測位を可能にする。
GNSS / IMU カップリング
GNSSとIMUのデータ統合方式。Loose(測位解レベル)、Tight(疑似距離レベル)、Deep(信号トラッキングレベル)の3段階があり、Deep Couplingが最も高精度・高ロバスト。
Loosely/Tightly/Deeply Coupled
GNSS+IMUの結合方式。Loosely=測位解+速度を結合(低精度)。Tightly=擬似距離+キャリアフェーズを結合。Deeply(Ultra Tight)=GNSS受信機のトラッキングレベルでフィードバックし全演算をRAWデータで行う(高精度)。
結合が深いほど高精度になる。Deeply CoupledはGNSS受信機側で処理するためSIから見るとブラックボックス → 採用するGNSS受信機の選択が決定的に重要になる。
高精度速度計(LDV/LDP・レーザードプラー速度計)
LDV(レーザードプラー速度計)を使った高精度速度計。屋内自律走行が可能。
LDPは速度・距離の「正しさ」を保証する「距離の証拠装置」。IMU(推測航法)と違い積分誤差が暴走しない。
ビジュアルオドメトリ(GNSS+IMU+カメラ)
画像処理技術(ビジュアルオドメーター)でGNSSを補完するセンサーフュージョン技術。GNSS+IMU+カメラを統合する。
オプティカルフロー/VO/VIO/床向きカメラ
画像速度計の方式。オプティカルフロー=連続画像の画素の動き=速度ベクトル。VO/VIO=特徴点を追跡して移動量を直接推定。床向きカメラ=床テクスチャの移動=ほぼ純速度。
Gaussian Splatting/点群データ
点群データと画像の重ね合わせから3D表現を生成する技術。現実の環境を即座に3Dモデルに変換する(高速キャプチャ・瞬時モデル化・クロスプラットフォームアクセス)。
計測結果は画像にすべて座標があるので、位置特徴点として画像からの位置出しが可能。計測時に一緒に3D画像を収集し、RTK・屋内推測航法の位置キャリブレーションに活用する。
シームレス測位
屋外GNSSと屋内測位、あるいは異なる測位技術の間を切れ目なく接続し、ユーザーの動線に沿った連続的な位置情報を提供する技術。複数技術のハンドオーバーが鍵。
CATEGORY 04: 衛星認証信号
QZNMA / みちびき航法メッセージ認証
Quasi-Zenith Satellite System Navigation Message Authentication。準天頂衛星の航法メッセージに電子署名を付与し、信号の真正性を検証することで、偽の衛星信号(スプーフィング)による欺瞞を防ぐセキュリティ機能。
信号認証サービス(QZNMA)は2024年4月に本運用を開始(試験段階は終了)。認証対象はGPS L1C/A・L1C・L5、Galileo E1B・E5a(L6Eで配信)に加え、QZSS L1C/A・L1C・L5。2025年2月打上げの6号機分は2025年7月から配信開始。
署名付き航法メッセージ(航法メッセージ認証)
航法メッセージに電子署名(デジタル署名)を付与し、正当な衛星から送信され途中で改ざんされていないことを受信機側で検証できるようにする仕組み。署名対象は衛星ID・時刻情報・航法データ。
従来GNSSは航法メッセージを「正しいものとして信頼する」前提だった。認証GNSSでは「この時刻・この位置情報が本物である」という根拠が得られる。管制局が秘密鍵で生成、端末が公開鍵で検証する。位置認証(実在証明)の技術的な土台。
OS-NMA / Galileo信号認証
Open Service Navigation Message Authentication。欧州の衛星測位システムGalileoが提供する信号認証サービス。TESLA認証方式を採用し、GNSS信号の真正性を保証します。QZNMAと並ぶ国際的な信号認証の代表例。
2025年7月に公式に “Initial Service” 開始(公開観測フェーズ終了)。スプーフィング/リプレイ/改ざんリスクを大幅低減。既存GNSS構造を壊さずOpen Serviceのまま互換性を維持し、信頼性向上・制度/法務対応にも有効。3システムの中で最も実運用が進む。
TESLA認証方式(Timed Efficient Stream Loss-tolerant Authentication)
低帯域・断続的な通信環境でもメッセージ認証を実現するストリーム認証プロトコル。鍵チェーンの一方向性を利用し、過去のメッセージの改ざんを防ぎます。OS-NMAなどで採用。
スプーフィング
偽のGNSS信号を発信し、受信機を欺いて誤った位置・時刻を取得させる攻撃手法。ドローン、自動運転、決済など、位置情報の信頼性が重要な領域で深刻な脅威となり、信号認証技術(QZNMA等)が対抗策。
ジャミング
強い電波でGNSS信号を妨害し、測位を不能にする攻撃手法。意図的なものから、機器の不具合による意図しないものまで含まれ、対策には信号処理、空中線設計、複数センサー併用などがある。
Meaconing / リプレイ攻撃
GNSS信号を一度受信し、遅延させて再送信する攻撃手法。本物の信号を中継するため、信号認証だけでは検知が難しく、位置・時刻の整合性チェックや、複数センサーの組み合わせによる対策が必要です。
CATEGORY 05: PKI・電子署名
PKI / 公開鍵基盤
Public Key Infrastructure。公開鍵暗号方式を用いて、電子データの真正性、機密性、完全性を保証する仕組み。電子証明書を発行する認証局(CA)、証明書、利用者(端末)から構成されます。電子契約、金融、政府サービスの基盤。
電子署名
電子データに対する署名。送信者の本人性と、データが改ざんされていないことを暗号技術で証明します。日本では「電子署名法」により、紙の署名と同等の法的効力が認められています。
電子証明書
PKIにおいて、公開鍵の所有者を証明する電子データ。認証局(CA)が発行し、有効期限、所有者情報、署名アルゴリズム等が含まれます。サーバー証明書(SSL/TLS)、コードサイニング証明書などの種類があります。
認証局 / CA
Certificate Authority。電子証明書を発行・管理する第三者機関。信頼の起点となる「ルートCA」と、その配下で証明書を発行する「中間CA」があります。GlobalSign、DigiCert、政府認証基盤(GPKI)などが代表例。
タイムスタンプ / TSA
Time Stamping Authority。電子データに対し、特定の時刻に存在したことを第三者機関が証明する仕組み。「いつ」を証明する機能であり、PKIの「誰が(電子署名)」と組み合わせて使われます。GNSS時刻と組み合わせることで、より強固な時刻証明が可能です。
ハッシュ関数
任意の長さのデータから固定長の値(ハッシュ値、ダイジェスト)を生成する一方向関数。SHA-256などが代表的。電子署名やデータの改ざん検知に使用され、わずかな変更でも全く異なるハッシュ値となるため、データの完全性を保証できます。
MAC / メッセージ認証コード
Message Authentication Code。送受信者が共有する秘密鍵を用いて、メッセージの真正性と完全性を検証するコード。OS-NMAなどのGNSS信号認証でも採用されます。電子署名と異なり、第三者への証明はできません。
ノンス / Nonce
Number used once。リプレイ攻撃を防ぐために、通信ごとに使い捨てる一意の値。タイムスタンプやランダム値が使われ、過去のメッセージを再送する攻撃を無効化します。
真正性 / 完全性 / 機密性
情報セキュリティの3要素(CIA)に対応する概念。真正性(Authenticity)は「本物であること」、完全性(Integrity)は「改ざんされていないこと」、機密性(Confidentiality)は「許可された者だけが参照できること」を意味します。PKIや信号認証は、主に真正性と完全性を担保する技術です。
CATEGORY 06: データフォーマット
NMEA / NMEA 0183
米国海洋電子機器協会(National Marine Electronics Association)が規定する、GNSS受信機を含む海洋電子機器のデータフォーマット。GGA(位置・品質)、GLL(緯度経度)、ZDA(時刻)など複数のメッセージタイプがある。
RTCM
Radio Technical Commission for Maritime Services。DGNSSやRTKの補正情報を伝送する国際標準フォーマット。Ver.3が広く使われており、基準局から移動局へ補正データを配信する際の事実上の標準です。
RINEX
Receiver Independent Exchange Format。GNSS受信機の観測データを記録する受信機非依存の共通ファイル形式。世界標準フォーマットで、後処理解析やRTK解析で広く利用されている。
BINEX
Binary Exchange Format。受信機に依存しない共通形式のバイナリ生データフォーマット。基準点から解析センターへのデータ伝送等で利用され、国土地理院の電子基準点受信機などで採用されている。
CATEGORY 07: 応用・市場
動態管理
人・車両・搬送機・荷物などの位置や状態を、リアルタイムに把握・記録する仕組み。製造業、物流、建設業のDXで中心的な役割を果たし、屋内外の測位技術や時刻同期が基盤となる。
ジオフェンス
地理的な仮想境界線。設定した領域への出入りをトリガーとして、通知やアクションを発生させる仕組み。位置情報の精度と認証が、運用の信頼性を左右する。
V2X
Vehicle to Everything。車両と他の車両(V2V)、インフラ(V2I)、歩行者(V2P)等との通信。協調自動運転や交通安全に不可欠であり、高精度な位置と時刻同期が基盤として求められている。
構造ヘルスモニタリング / SHM( Structural health monitoring )
橋梁、ビル、トンネルなどのインフラに多数のセンサーを設置し、構造の健全性を監視する技術。複数の振動計を同期させるためにマイクロ秒級の時刻同期が必要。
CATEGORY 08: 認証・実在証明
このカテゴリは、Spacid株式会社の時空認証サービス「SPACID」の独自領域です。
位置認証/時空認証(Location / Spatiotemporal Authentication)
測位の「精度」ではなく「実在性」を証明する考え方。真正性のある基準時刻と、位置の推定(位置指紋の照合など)を統合し、「いつ・どこに在ったか」を証明します。
GNSS・画像・センサー・外部情報を組み合わせる統合技術そのものが特徴です。みちびきのL6信号を受信できる専用受信機局で認証情報を取得・検証し、L6非対応のスマートフォンやカーナビといった普及端末にも、その認証結果を活用する仕組みを想定しています。「位置を測る」ことの先にある、「位置と時間の信頼を設計する」ための土台となる概念です。
SPACID 4つの認証要素(Time / Location / Device / Route)
時刻認証(TSA/TST)、位置認証(GNSS/位置指紋)、デバイス署名(Device Identity)、移動軌跡(Route Continuity)の4つの物理証拠を組み合わせる認証フレームです。
「位置 × 時間 × 認証」を出力とし、どれか一つではなく4要素を束ねることで、「その事象が現実に起きた」ことを多層的に裏づけます。一点の情報は偽装できても、4つの物理証拠を同時に矛盾なく偽装することは困難です。インフラ保守管理、大規模施設の動態管理、時系列データによる予知保全、LBS、事象認証サービス(安全・物流・決済・SNS)など、幅広い用途の共通基盤になります。
関連用語:TSA/TST ・ 位置指紋 ・ TPM 2.0/デバイス署名 ・ 移動軌跡/線の連続性
存在認証/実在証明(Existence / Reality Proof)
「測位の世界(精度・制御・競争市場)」と対をなす、「実在証明の世界(説明責任・信頼・不可逆)」。信頼や説明責任の証明が必要とされる市場領域を指します。
cm級の高精度測位市場(自動運転・建機・測量・RTK/PPP)とは競争軸が異なります。ここで問われるのは「精度」ではなく「実在性」であり、防災・インフラ・監査・説明責任といった、後から「本当にそこで起きたのか」を問われる領域が主戦場です。決済が即時・不可逆になるほど、事前の実在性監査の必要性は高まります。
関連用語:実在性スコア ・ CNP不正 ・ SPACID/Absolute Root of Trust
実世界の絶対信頼基盤(Absolute Root of Trust)
時刻 × 位置 × デバイスの物理証拠を統合し、デジタル空間に「絶対的信頼の基盤(Absolute Root of Trust)」を提供する時空認証サービスです。
SPACIDはTPMの製品でも、GNSSの製品でも、TSAのサービスでもなく、それらを束ねる「信頼の基盤」です。PKIが「情報の信頼(誰が・いつ)」を担うのに対し、SPACIDは「現実の信頼(どこで・本当に起きたか)」を担います ―― PKI proves information, SPACID proves reality。AIは画像・音声・映像・文章を生成できますが、物理世界の事象そのものは生成できない、という前提に立っています。
関連用語:位置認証/時空認証 ・ TSA/TST ・ TPM 2.0/デバイス署名 ・ 位置指紋
CNP不正(CNP Fraud/Card Not Present)
非対面決済における不正利用。カード番号は正しいが、本人はその場にいない、という形のなりすまし決済です。
既存の暗号化は「データの中身」は守れても、「発生の事実(いつ・どこで・誰が)」までは証明できません。位置とデバイス署名から算出する実在性スコア(Presence Score)を用いれば、物理法則に反する決済 ―― たとえば1時間前に東京で決済し、現在ニューヨークで決済 ―― を自動的に弾けます。AIによるディープフェイクや番号流出で「カード+静的パスワード」が容易に突破される時代に、「行為」そのものの真正性で守るという発想です。
関連用語:実在性スコア ・ 位置指紋 ・ GNSSスプーフィング/リプレイ攻撃
GNSSスプーフィング/リプレイ攻撃(Spoofing / Replay Attack)
スプーフィングは、偽の測位信号を送って受信機を欺く攻撃(GPS偽装)。リプレイ攻撃は、過去の正規な信号や記録を後から再送して時刻・位置を偽る攻撃です。
生成AIやDeep Fakeと並ぶ、データの真正性に対する代表的な脅威です。VPNやGPS偽装アプリで検知を回避する「位置偽装(Location Spoofing)」も同じ系統です。対策は単独では効きにくく、署名付き航法メッセージ(OS-NMA/QZNMA)で信号の出所を保証しつつ、移動軌跡(線の連続性)で「人間にはあり得ない動き」を排除する、という多層防御が要点になります。
関連用語:署名付き航法メッセージ ・ OS-NMA ・ QZNMA ・ 移動軌跡/線の連続性
QZNMA(みちびき信号認証)
QZSS(みちびき)の航法メッセージ認証。JAXAの準天頂衛星を用い、電子署名付きのL6信号やL1C/A・L1C・L5信号からの航法メッセージで、信号の真正性を保証します。
宇宙からの絶対座標と地上の暗号技術を融合させることで、スプーフィング(GPS偽装)を物理的に無効化します。GalileoのOS-NMAと並ぶ「衛星側の認証ソース」で、SPACIDではこの航法署名信号を信頼の連鎖(Chain of Trust)の起点として取り込みます。資料や仕様によっては「QZNMA」という略称で参照されます。
関連用語:署名付き航法メッセージ ・ OS-NMA ・ L6信号 ・ 2段階TSA
TSA/TST(時刻認証局/タイムスタンプトークン・RFC 3161)
TSAは時刻認証局、TSTはタイムスタンプトークン。RFC 3161に準拠し、あるデータがその時刻に確かに存在したことを、第三者の立場から証明する仕組みです。
SPACIDではみちびき衛星認証信号と連携した基準時刻を用い、1ミリ秒の狂いもない「基準時刻」で、過去への改ざんを物理的に不可能にします。一般的な電子署名・タイムスタンプが「誰が・いつ」までを担うのに対し、これを衛星由来の時刻・位置と結びつけることで「どこで」まで踏み込めるのが、SPACIDの拡張点です。
関連用語:2段階TSA ・ Verify API/信頼の連鎖 ・ SPACID/Absolute Root of Trust
2段階TSA(内部TSA × 外部TSA)
エッジ側で即座に署名する内部TSA(Edge Sign)と、通信回復後にクラウド側で行う外部TSA(RFC 3161)を組み合わせた、二段構えの時刻認証です。
地震などで地震などでLTE回線が輻輳・途絶しても、まずエッジ側で観測データを即座に認証(内部TSA)し、通信が戻ってから外部認証局でRFC 3161の検証を行います。内部TSTと外部TSTを同期させることで、「現場での事象発生時間」と「サーバへの登録時間」を両立できます。トンネルや災害といった通信が不安定な現場でも信頼を切らさない、耐災害ハイブリッド構造です。
関連用語:TSA/TST ・ Detached Signature ・ Verify API/信頼の連鎖
Detached Signature(分離署名)
データ本体とは切り離して生成・保持する署名。SPACIDでは端末内(TPM)に署名を保存する方式をとります。
通信が断たれるトンネルや災害時でも「署名」は端末内で完結するため、後から検証すればよく、データに空白期間(Blank Spot)を作りません。Online → Offline/Tunnel → Recovery の3フェーズを通して、生データそのものを送らずに改ざんだけを検知できるため、プライバシー保護にも資します。GPS信号に署名を埋め込むGPS CHIMERAの「分割署名」とは別概念なので、混同しないよう注意してください。
関連用:2段階TSA ・ TPM 2.0/デバイス署名 ・ CHIMERA
TPM 2.0/デバイス署名(Device Identity)
端末内のTPM 2.0(セキュアエレメント)に秘密鍵を封じ込め、データの「発生源」の時点で署名を付与する仕組みです。
秘密鍵をハードウェアで保護することで、ソフトウェアレベルのなりすましを排除し、「誰が(どの正規デバイスが)」を物理的に証明します。エッジでTSAの信頼性を担保する土台でもあります。実証(PoC)では、小型コンピュータに TPM 2.0 とマルチバンドGNSS受信機を組み合わせたゲートウェイとして実装しています。
関連用語:TSA/TST ・ Detached Signature ・ SPACID 4つの認証要素
位置指紋/通信指紋(Location Fingerprint)
GNSSの受信特性(衛星配置・信号強度・受信品質)に、周辺の電波環境(Wi-Fi/BLEのSSID・RSSIなどの通信指紋)と移動の連続性を重ね合わせた、「その場所固有の物理環境指紋」です。
衛星電波が届かない屋内・地下・GPSジャミング環境でも、「そこにいた事実」を多層的に検証できるのが強みです。運用とともに学習・蓄積される模倣困難な学習型データベースであり、これ自体が競争優位を生む基盤資産になります。GPS偽装アプリやVPN経由の海外からの不正アクセスを排除できます(特許出願中/PCT追加出願技術)。
関連用語:屋内測位方式 ・ 高感度GNSS ・ 移動軌跡/線の連続性 ・ 位置認証/時空認証
移動軌跡/線の連続性(Route Continuity)
位置を「点」ではなく「線の連続性」として検証する考え方。位置情報の履歴(軌跡・行動パターン)の文脈(CONTEXT)を解析します。
人間には不可能な瞬間移動や、不自然なジャンプ(=スプーフィングの兆候)を、アルゴリズムで検知・排除します。一点の座標だけを見ても本物か偽物か判別しづらいものですが、衛星の切り替え時の信号特性まで含めて「線」で見ると、矛盾が浮かび上がります。文脈(コンテキスト)認証の中核を担う考え方です。
関連用語:GNSSスプーフィング/リプレイ攻撃 ・ 位置指紋 ・ SPACID 4つの認証要素
実在性スコア/Presence Score(本人実在性スコア)
時刻・位置・デバイス・文脈の物理証拠を統合し、その事象が現実に起きた確からしさを数値化したスコア。SPACID Trust Engine(実在性スコアエンジン)が判定します。
従 来のルールベース(不正検知)から、物理ベース(実在証明)への転換を表す指標です。守る対象は「アカウント」ではなく「行為そのもの」の真正性になります。決済領域では本人実在性スコア(Identity Existence Score)として、ネットワーク障害時のアクワイアラ仮承認の判断材料などに使えます。
関連用語:CNP不正 ・ Verify API/信頼の連鎖 ・ 位置指紋
Verify API/信頼の連鎖(Chain of Trust)
Edge(TPM電子署名+センサー情報)→ TSA(時刻スタンプ付与)→ Cloud(Verify API:署名検証・実在性スコア判定)と、エッジからクラウドまで一本につながる信頼の連鎖です。
オンライン・オフラインの両方に対応するハイブリッド構造です。Verify APIの出力は判定結果(verdict)・証跡(evidence)・メタデータなどで、ログ保存にも対応します。顧客(保険・物流・決済など)は、このAPIを経由して検証結果を既存システムに組み込むだけで、自前で認証基盤を作らずに実在証明を利用できます。
関連用語:2段階TSA ・ TSA/TST ・ 実在性スコア